野良研究者の備忘録

経営学と材料加工が専門の企業研究者ナニガシが思うことを語る場

博士について思うこと

今回から数回に分けて、社会人博士進学の経緯について記していきます。

管理人の経歴は、

2012年:修士卒業後、新卒で大手電機メーカーに入社。機械設計3年の後、新規事業開発担当。
2018年:社会人博士課程に入学(都内のトップ級国立大学、工学系)
2019年:ビジネススクール入学(同じく国立大学、経営系)
2021年:工学博士、経営学修士取得
*社会人としての業務は常時継続。休業期間は育休3ヶ月のみ。

管理人の場合は家庭もあり、2015年に娘が、2020年に息子が生まれていますので、もっとも忙しい時期では、 

家事/育児/通常業務/博士/ビジネススクールの同時並行

でした。ヒイヒイ言いながらも、ありとあらゆる手段を駆使して生き延びてきました。そのノウハウを共有していきます。

 

 

第一回として、社会人博士進学に至る発端から書いていきます。

 

 

本記事の狙い

社会人博士課程に興味がある方、サラリーマンでももっとハードワークできるぞ!と感じている方、に対してケースを提供すること。

今回は特に博士に対する捉え方について共有します。

 

博士課程って何?

本記事を読んでいる方は、多少なりとも博士に興味を持っている方だと思いますので詳しく説明はしませんが、

博士というと特定の学問領域に関して極めた人、というイメージを持つ方が多いかもしれません。

管理人はこれは必ずしも実態に近い表現ではないと考えています。

博士とは、一つの学問領域に関して一定の知識や経験を備え、論理的思考力を備えた人間であることを証明された人、です。

博士という存在はあくまで、ある分野で論文執筆の経験があり、それを博士論文という一冊の書物を論理的にまとめ上げた経験を持つ人です。

博士は研究者としての入り口に過ぎなく、それだけでその分野の専門家として振舞うのはちょっと無理がある。

しかし・・・論文の査読を通すということは本当に大変です。ある論文を書き上げたとして、指導教員の厳しい指摘を乗り越え、何度も修正し、論文投稿後には複数人の査読者からそれぞれ異なる指摘をもらいそれに対応していくのです。ひどいときには、実験、解析をやり直し、簡潔にまとめてもワード数ページに渡る返答を論理的な矛盾がなく書き連ねなければいけない。このストレス足るや半端ありません。だからこそ、管理人は、博士と対峙するときには、専門性はピンキリだけれどもこの論理的思考力に関してはかなり信用できると考えています。

 

パートタイム学生とフルタイム学生

修士を卒業してそのまま博士課程に進む方はフルタイム学生と呼ばれます。フルタイム学生はその名の通り基本的に自由が利くすべての時間を研究に注ぐことができます。もちろんアルバイトやTA(Teaching Assistant)、研究室の後輩指導も行いますが、体感的には、全工数の半分、つまり週に2-3日程度は研究に当てることができるイメージです(学診取得できる優秀な学生は週4日程度までは自由が利くかも)。

対して社会人博士は、多くの場合、通常業務を別で持っているわけですから多くて週に1日+土日+深夜が普通ではないでしょうか。

昔は論文博士と呼ばれる方もいましたが最近はほぼ見ませんね。

 

さて、管理人がこのブログを書くきっかけでもあるのですが、Google先生に社会人博士について質問すると、たくさんの先人の体験記が出てくるのですが、最近のものになればなるほど、データサイエンスに傾いてくるように感じています。

管理人の感覚ですが、データサイエンスはあくまでPCと自分の頭があれば研究できてしまう分野です(異論あったらすみません)。管理人は、数千万円する実験機を使用して論文を書きました。このような実験偏重型の社会人博士は、博士課程におけるプロセスが異なるのでなかなか参考になりづらいのです。最近はディープテックとか言うこの実験偏重型の領域では、実験に必要な時間と機材の確保が必要です。すると社会人が自費で通うことは難しく、会社のサポートがなければ難しいのではないでしょうか。

管理人は、所属する企業の中に社会人博士の制度がありました。そこでこの制度を使い、博士課程に進みましたが、入学できるまでに6年かかっています。会社としても社員を大学に派遣するというのは大きな投資ですから、それなりにハードルを高くすることも当然とは思います。そのため現実的に、企業の制度を使う場合には、会社の中で自分自身の信用を積み上げ、戦略的に活動していく必要があると考えています。

本ブログの中では、このような企業の中でのリアルな動き方みたいなところにも踏み込んで共有していきます。

 

どうやってなるの?

博士入学時には試験がありますが、テストよりも研究計画書の出来が評価を左右します。研究計画書とは、博士課程でどんな課題に立ち向かい、どんなプランで研究していくかのプレゼンテーションです。

そして研究計画書を練り上げるためには、試験前に指導教官と内容についてすり合わせることが非常に重要です!

そして指導教官と入学前から親密になるためには、入学前の戦略が非常に重要です!!

次回以降で、時系列に沿いながら管理人がとった戦略を書き残していきます。

 

社会人博士特有のコツ

に関しても簡単に。

 

1つ目は上でも書きましたが、社内で実績を積み会社から信用を得ることです。会社の制度を利用するからには、さらっと申請して承認されるということはまず考えられません。当然ながら社内にはこの制度利用を狙っている先輩方が多数いる中で選ばれなければいけません。ある意味では、「若い」ということがアドバンテージになるかもしれませんが、やはりある程度自分の優秀さ、というか、言ったことは必ずやり遂げる、という信用が必要です。これがあれば社内選考を勝ち抜き、晴れて博士学生となることができる可能性が高まります。

 

2つ目には、社内でいくばくかの決裁権を持つことです。これは、具体的には、自分がプロジェクトリーダーとなる、もしくは、管理職と昵懇になるかいずれかです。

ディープテック系の社会人博士の場合、入学後も定期的に資金が必要です。学費や論文投稿費用などは、どんな博士でも必要ですが、ディープテックでは日々の実験費用に半端ない金額が(管理人の場合は、年間100万円以上でした。学費は含まずですよ。。。)必要です。こうした金額を3年間にわたって捻出しなければならないのです。

管理人はそのために、自分でプロジェクトリーダーとなり、自分のプロジェクトの中で自分の指導教員との共同研究をセッティングし、自分自身は一定な工数で博士学生として研究する、という座組を作りました。

こうすることで、自分がプロジェクトリーダーとして成果を上げ続けている限り、博士課程にかかる予算を確保し続けることができました。

自分でリーダーにならずとも信用のおけるリーダーが上にいるのであればその方に予算確保はお願いしてもいいかもしれませんが、その場合にはリーダーが交代してしまうと一気に苦しくなります。リスク管理の観点からは自分がリーダー的なポジションを経験しておくと、うまく立ち回れるのではないでしょうか。

 

3つ目には、社会人博士に慣れている研究室を選ぶこと、を挙げます。

指導教員からすると、社会人博士はフルタイムの学生と比べると凄く立派に見えるようです(社会人経験があるので当然ですが)。そのため、入学前は非常に評価が高くても、入学後にトラブルが生じる場合があります。これは、教員側が学生の業務負荷や会社の方針変更といった社会人博士の特徴を理解していない場合に生じます。

そういう意味では、過去に社会人を受け入れて卒業させた経験がある教員のもとで研究するのが、リスクヘッジの意味で良いのではないかと思います。

大学選びに関しても、社会人コースがある大学のほうが良いかもしれません。この辺りは学部にも寄るようなので指導教員の候補となる先生にしっかり確認してみてください。

 

以上三点を図示してまとめてみます。

1点目の実績の積み上げは、管理人の場合、入社から三年間の設計者としての期間、その後2年間の新規事業担当としての期間が当たります。この間は、その場の仕事に集中し社内表彰などを目指し、いくつか成果を上げることができました。

2点目の決裁権に関しては、2017年から二年間に当たります。この期間で、マネジメントを初めて経験し、自分の博士進学をマネージャーの立場で実現しました。そして、博士進学後には、マネジメントを降り、学位取得と担当としての業務に集中しました。

3点目の研究先の選定は、2015年からの期間ですが、段々と博士の制度利用を具体的にイメージし始め、研究室の選定に入りました。上司からも国内外の複数の研究室を初会され、その中の一つに決めました。

 

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それぞれ詳細は、この後に書いていきます。

 

まとめ

今回は、社会人博士について思うことを書きました。

総じて、特にディープテックの社会人博士は、社内でしっかりと下準備をして、大学の事情、会社の事情を考慮に入れながら博士進学の戦略を組んでいくことで、学位取得の確率が上がると考えます。

次回からは、管理人がその時々で何を考えていたか、時系列的にまとめていこうと思います。